Exhibition|コントロールX:切り取りの制御




概要
展示作家:藤崎 了一 / Hogalee  
会期:2022年6月23日(木) - 6月26日(日)
時間:13:00-20:00
会場:ソノ アイダ #新有楽町
住所:東京都千代田区有楽町 1-12-1 新有楽町ビル1階 北側112区画
主催:株式会社アトム(A-TOM Co., LTD.)
企画:ソノ アイダ実行委員会
協力:三菱地所
機材協力:BLACK+DECKER / DEWALT / LENOX / IRWIN

イベント情報
6月23日(木)
オープニングレセプション :18:00~
作品解説ツアー:18:30~
Hogalee パフォーマンス:19:00~
※当時、クラフトビール専門の小さなボトルショップ「hammam Craft Beer Bottle Shop」が様々クラフトビールをご用意してお待ちしております。

6月24日(金)
作品解説ツアー:18:30~




この度は、ソノ アイダ#新有楽町ARTISTS' STUDIO第四弾の作家の藤崎了一とHogaleeによる二人展「コントロールX:切り取りの制御」を開催します。二人の異なる性質の作家のレジデンスの成果展となる本展は、それぞれの作家が実践の中で行う「切り取り」への所作およびその制御に着目し、彼らの活動の断面図を展示する試みである。

先ず、切り取るという所作について考えたい。意味について考えると、切るという所作の最小単一がひとつのものを二つのものに分けることであり、切り取るということはその切る所作のあとに取るという選定の恣意性があることを示唆する。それは言い換えれば、取る側、取らない側と、ある断面を境界面に意味の正負を定義するということではないだろうか。そのような拡張解釈の中で、我々は切り取りの所作から改めて社会における様々な境界面たち、およびそれらが露見する断面という表現について考えることができると考える。

藤崎了一の《Meltism》シリーズは規則性がまるで見えない複雑な立体を発泡スチロールから造形した作品シリーズである。この作品シリーズは、弛んだ電熱線を発泡スチロールの塊の中で曲がりくねらせ、複数の曲線的な断面を行き交わせることで制作している。電極で熱されたニクロム線を二本のハンドルで扱い、滑らかな軌道で発泡スチロールの中を動かす制作工程はまるで踊りのような身体性をもつのである。藤崎曰く、本シリーズは最終的な形のイメージから逆算的に作るのではなく、”踊り”のプロセスを経て結果的に空間から切り出された複数の立体たちから、選定をすることで制作される。恣意性が選定に宿るなか、高熱に熱されたニクロム線を用いた”踊り”から溶かされて生まれてくる発泡スチロールの断面の数々で構成される立体作品の表面はすべて、身体動作(=action)の痕跡であるのだ。作品への痕跡、という点において藤崎の《scan》シリーズにも同様のメンタリティが読み取れる。木製パネルに粘着性の壁紙を張りそれをまた剥がすことで、壁紙素材に木片を付着させた姿を作品とする本シリーズは、商業用塩ビシートを剥がしたあとの粘着面という三次元的に捉えた表情に着目し制作されている。藤崎の剥がし方によって作品のマティエールはある程度制御され、クロッピングを通して平面作品に昇華していくなか、それは粘着面という負の空間を正の空間として捉えられる。従来の支持体に対して素材を付け加えることで生み出される平面作品のプロセスとは大きく意味が異なる本作のプロセスは「立体言語を用いた平面作品」であり、藤崎のこの実験を重ねて生み出された試みは、《Meltism》シリーズ同様、作品は身体性やコンセプトの実践の先に現れる作家の痕跡として形をもつ。そしてそういった実践や選定に現れる作家性は、暴力性の現れとして捉えることもできる。計算的であり誘発的である実践のバランスは、同時に美術のもつ暴力性の迎合であり、称賛でもあるのだ。

切り取りの制御という点において、作家のHogaleeも切り取りの制御を行っていると言えるだろう。Hogaleeは05年に描いた漫画から始まり、20年近くにわたってキャンバスや展示場の壁にイラスト風のモノクロ女性像を描き続けている作家である。今回のシリーズである《Honored one》は、同じ女性像の原画を様々な切り取り方で編集しキャンバスや壁にプリントしたものである。支持体に同じ原画を角度やサイズを変えながら手描きで転写していく実践は、まさに画像の切り取り(そしてペースト)であり、決してその女性像の全身が一つの作品に現れない作風は、選定の恣意性を感じさせる。被写体となるモノクロの女性像は自身の「理想の女性」であると語るHogaleeは、決して性癖や好みの話をしていない。タイトルである《Honored one》が仏典の「天上天下唯我独尊」の英訳から来ることから示唆されるように、彼のいう「理想」とはもっと神的であり、色鮮やかでポップな作風では一見読み取れない偶像崇拝のような信仰心が感じ取れる。というのも、Hogaleeは実に20年近く、マイナーな服装やポージングの変化は時代とともにありつつも、同じ方法論を様々な支持体を用いて実践してきたのだ。昨今の美術市場で賑わいを見せるような作品たちとスタイルが類似していると感じることは、Hogaleeの市場先見性の現れとして捉えることもできるが、むしろそれは狂気的なまでの一貫性に社会のトレンドが追いついたからだとも言える。彼の「理想の女性」へのオブセッションの先にあるモチーフの反復と同じ原画の多様な切り取り方への執念は、まさに切り取りの制御を語る上で重要なプラクティス事例であるのだ。同様に、テープで描かれたHogaleeの女性像たちは、巨大な姿として空間の平面性をも凌駕し空間にそびえ立つ(蛇足な解釈だが、05年というスーパーフラットの影響がまだ強い時期の制作で生まれた作品たちの巨大な女性像は、言うならば我々リトルボーイたちに対して聳えるビッグガールであるといえる)。マスキングテープを手で千切りながら作っていったモノクロの女性像は、会期が終了するとともに剥がされ、テープの塊になってしまう。その一過性で移動していく姿に、キャンバス生地は当てられ、クロッピングするように姿をキャンバス作品たちに影絵のように残していく。偶像的であり、同時に一部分的でしかない被写体の女性像の複写のプロセスの背景にあるHogaleeの執念的な実践もまた、作家の恣意性をもって作品という形に編集されているのである。

Ctrl+X(切り取り)コマンドの日常性、そしてその活用というものは、誰しもが馴染みがあると思われる。様々な情報、ひいては空間や物質性さえもテクノロジーの発展とともに切り取られ編集されていく時代において、その暴力性を制御する(≒自制する)役割は個々の恣意性を基点に所在範囲を拡大していくことは容易に想像される。本展では、その基点となる二人の作家の実践痕跡が社会にとってもたらすべき意義を、切り取りの先にある解釈の所作の中にあるとし、鑑賞者とともに考えるきっかけになるのだろうと考える。

丹原健翔





藤崎 了一
1975年大阪府生まれ。京都市立芸術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了。 素材に対峙する自身の身体素材のもたらす「現象」という要素を掛け合わせることで、既知の素材を一気に飛躍させた表現へと昇華させる作品を発表。立体・写真・映像など、幅広いメディウムを用いる。 2020年にEmerging Photographer of the Year Awardファイナリスト受賞(英国)、sanwacompany Art Award / Art in The Houseファイナリスト受賞など




Hogalee / ホガリー
現代を映す鏡として女性『girl / オンナノコ』をモチーフにコミック描写の線画にて記号化したものを描き続けている。 美人画などで美を表すものとして描かれる女性像をテーマに、現代アートやカルチャーの文脈をレイヤーにしたキャンバス作品や、 キャンバスという枠を超えた支持体として空間描画(壁画)をアクリルペイントやマスキングテープ自体での描画などで制作している。
OFFICIAL WEBSITE



丹原健翔 KENSHO TAMBARA
キュレーター、作家。ハーバード大学美術史卒業後、帰国し展覧会企画やアーティストマネジメントに携わる。アートスペース新大久保UGO立ち上げ。主な展覧会に、森山大道展(19年、kudan house)、未来と芸術展(19年、森美術館、作家として)、ENCOUNTERS(20年、ANB Tokyo)、Dream Play Sequence (21年、富山県美術館内レストラン「BiBiBi&JURURi」)など。


©️2015 ソノ アイダ