Exhibition

I count three bodies

島内 秀幸/ Ryu Ika / 松井 祐生(関川卓哉)


展示概要
I count three bodies
作家:島内 秀幸/ Ryu Ika / 松井 祐生(関川卓哉)
会期:2022年12/1(木)〜12/4(日)
時間:13:00〜20:00
会場:ソノ アイダ#新有楽町
住所:東京都千代田区有楽町 1-12-1 新有楽町ビル1階 北側112区画
主催:株式会社アトム(A-TOM Co., LTD.)
企画:ソノ アイダ実行委員会
協力:YAU / 三菱地所
機材協力:BLACK+DECKER / DEWALT / LENOX / IRWIN
Curated by TOKYO PHOTOGRAPHIC RESEARCH



22年11月頭から行われてきたARTISTS' STUDIO第7弾では、松井祐生(関川卓哉)、Ryu Ika、島内秀幸の3名のアーティストがソノ アイダ #新有楽町にて滞在制作を行った。本企画は、隣ビルのYAU STUDIOを活動拠点とするTOKYO PHOTOGRAPHIC RESEARCH(以下、TPR)のキュレーションにより作家が選定され、ARTISTS' STUDIOシリーズの中でも初のコラボレーティブな企画となった。結果として、本展では第7期のそれぞれの作家活動だけでなく、それらが街という単位でのコミュニケーション、ひいてはその単位を通して露見されるコミュニティの姿をも表してくれる貴重な機会となったことを、まずはTPRの小山泰介氏とキュレーターの金秋雨氏に感謝したい。

今回の選定について、小山泰介氏と金秋雨氏は以下のように考える。

「街」をどのように「写真」的に編集するのか、
そして、いかにしてスペクタクルから逃れられるのか、
(3名の作家)の視線から派生する「場」としての有楽町を、
鑑賞者とともに見出したいと考える。


僭越ながら説明を加えると、ここで言及する「場」とは、物理的な場所(スペース)であり、また様々な作用がもたらされる力場(フィールド)であると言えるだろう。本企画に参加された3人は、それぞれ一般的な写真表現の粋にとらわれない姿勢で作品たちを発表する写真・映像表現を軸とした新鋭の作家たちである。制作方法から展示方法まで一貫して、従来の媒体を軸とした切り口を超えた広がりをもつ3人が、互いの表現を同じ場に共存させ空間に生みだしている、”せめぎ合い”とも呼べる緊張感は、まさに力場(フィールド)としての意義となったことを留意したい。

本展のタイトル、「I count three bodies」は、天体力学で、互いに重力相互作用する三つの質点の運動が非常に複雑かつ不規則なため予測することが困難である「Three-body Problem(三体問題)」を参照している。絵画や彫刻の作家たちと異なり、これまでのARTISTS’ STUDIOとは比でないほどの作品量のある本展では、それぞれの作品たちが重要視する世界観を考えるにあたって、空間の占有率やその空間を鑑賞者として捉えたときのイメージを検討することが大事になった。ラッカースプレーを自身が撮った写真に吹きかけたり、複数の写真や映像を3Dの技法で重ねるように編集し、個人個人の視点から見える社会基盤としてのコミュニケーションの複雑性を訴える松井祐生。現代社会の見る見られるの監視関係の中から個人のアイデンティティについて考えながらも、個人の意識からさえも剥離してしまった日常の瞬間を言葉通り積層し、作家自身もまた見られる対象であることを示唆するRyu Ika。社会に漂流する様々な印刷物や広告のイメージを撮った写真を一つ一つ漂白剤の溶液で手作業で破壊し、イメージを消失させるとともに、それらのイメージに無意識にも紐付けられる個々が内包する知覚や記憶を呼び起こす島内秀幸。このように、それぞれの作家のもつ作品作りの”言語”はまるで異なるため、通常なら空間を分けて展示をするか、会期を分けて個展をするべきであると、キュレーションの観点からは考えることが容易である。だが本展ではあえてというべきか、その三体が滞在制作の期間を共有したことを踏まえ、同空間で互いに相互作用する姿を捉えることの意義を考えるきっかけともなっている。

本展が、いわゆる写真作品展であるのに、ここまでも質的で有形で、作家・鑑賞者の関係を身体性という観点から考えることが求められることは、大変興味深いことである。作品たちから想像できる制作プロセスから、VRや立体、または天吊りといった作品の展示のプロセスまで、その身体性の緊張感は現れており、鑑賞者は等身大の作品たちを一度ひいて、見られる視線から離脱し俯瞰しなければ展示という全体像を把握することができない。そのように指を指して、”身体を数えていく”ような俯瞰の視点は、一種の自己防衛の所作でもあるとも言えるだろう。作家たちの作品たちのもつスペクタクル性とも呼べる強度から鑑賞者は自ら距離を取らざるを得ないのは、これはまた、街という「場」の中でもつ芸術の意義にも通ずる、関係性の力学の話なのかもしれない。
丹原 健翔




島内 秀幸
1985年佐賀県生まれ。グラフィックデザイナーとしての活動を経て、2019年より写真を使用した制作を開始。 都市の中で見つけたゴミとして落ちている印刷物の写真を漂白したシリーズ「Paralysis」で、TOKYO FRONTLINE PHOTO AWARD 2022で港千尋氏と小山泰介氏から審査員賞を受賞。

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Ryu Ika
写真作家。内モンゴル自治区生まれ。武蔵野美術大学卒業。在学期間中にエコール・デ・ボザールへ交換留学。第21回写真1_WALLグランプリ。2021年赤々舎から作品集『The Second Seeing 』(第二の観察)を刊行。個展・グループ展・自費出版多数。見ると見られざるを得ない現代監視社会における舞台性、そこに生きることについて、自己と他者との触り合い方を探る中で自分の居場所についての思考。それらのリサーチを写真に纏わるインスタレーションに可視化する試み。

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松井祐生(関川卓哉)
「駒澤大学法学部を卒業後、2016年写真新世紀優秀賞受賞を機に独学で映像/写真/ペインティング制作を始める。「変形/変容の分析」を基軸に制作する。 主な作品として、 自身の精神分析受診の記録映像を渋谷の夜景に暴露する「Comunities influence me」、自然と人間との矛盾する美的関係性を捉えた「Humancity in the nature」、人間の不安定性を放射性崩壊という現象に擬えた映像インスタレーション「レクイエム崩壊/潜在熱源」など。

主な展示
2016年「写真新世紀展」(東京都写真美術館)
2021年「Mirrors And Windows/The Shape Of Images To Come」(銀座奥野ビル)
2022年「BLeeDinG eDgE on PoST/pHotOgRapHy 写真は変成する2 選抜展」(京都芸術大学)
2022年 「Private House 生きられた家」
2022年「現代写真のアナキズム Ontological Anarchy on Photo」(日本橋アナーキー文化センター/ MIHARAYASUHIRO)など。

主な受賞歴
2016年 写真新世紀優秀賞受賞(SFMOMA エリン・オトゥール氏選)
2018年 AthePhotoFestival 特別賞
2020年 IMA NEXT グランプリ(ホンマタカシ氏選)
2020年 TOKYOFRONTLINE 準グランプリ
2021年 IMA NEXT ショートリスト選出(ヴィヴィアン・サッセン氏選)等


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TOKYO PHOTOGRAPHIC RESEARCH
東京フォトグラフィックリサーチは、2020年代を迎えた東京を出発点として、「都市の多角的なリサーチ」と「現代写真の実践的な探求」をコンセプトに、未だ見ぬ都市と社会と人びとの姿を可視化することを目的としたアーティスト・コレクティブ。写真家、美術家、メディア・アーティスト、音楽家、建築家、研究者、グラフィックデザイナー、編集者など、広く写真表現に携わる者達との協働によって、アートプロジェクトや展覧会、フィールドリサーチ、コミッションワーク、コラボレーション、国内外の美術大学との共同プログラムなど、多様な活動を展開している。2018年設立。代表は写真家・小山泰介。

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金秋雨|キュレーター
上海生まれ、東京在住。近年写真と映像の関係性をメインにリサーチする。中日英独翻訳。日本大学芸術学部美術学科 助教授、東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科博士在籍。2021年から、Non-syntax Experimental Image Festival主催。 主要展覧会:「Alter-narratives 」展 東京藝術大学大学美術館 陳列館→Online開催、「不在此見(Not in this Image)」Kuandu Museum of Fine Arts(台北)、「遭逢的映像(Encounter with image)」靜慮藝廊(台北)など



丹原 健翔 KENSHO TAMBARA
キュレーター、作家。ハーバード大学美術史卒業後、帰国し展覧会企画やアーティストマネジメントに携わる。アートスペース新大久保UGO立ち上げ。主な展覧会に、森山大道展(19年、kudan house)、未来と芸術展(19年、森美術館、作家として)、ENCOUNTERS(20年、ANB Tokyo)、Dream Play Sequence (21年、富山県美術館内レストラン「BiBiBi&JURURi」)など。

©️2015 ソノ アイダ